• Epoi in omotesando

    Epoi in Omotesando

    New Flagship Store

エポイ本店で色と光を感じる

PHOTOGRAPHY BY DAISUKE SHIMA(ADHOC)
TEXT BY NAOKI KOTAKA

東急プラザ銀座で体験するエポイの新しいストアコンセプト

色の体験をデザインする

「Epoi本店」の空間のコンセプトを教えて下さい。
まず、空間のコンセプトを考える前に、エポイのブランドアイデンティティとは何か、空間を通して何を伝えたいのか、私達とブランドで話し合いを重ねました。以前デザインを担当した銀座の「Epoi block」では、レザーグッズブランドであるエポイのものづくりに通底する、クラフトマンシップの要素を表現するために、什器にレザーを使ったり、什器の形状にエポイのバッグのパターンをトレースして使ったりしました。それから数年が経過し「エポイ=クラフトマンシップ」の認知が広がったとのことで、今回はもう一つのエポイのアイデンティティである「色」の要素を、空間に表現しようということになりました。
ものづくりの現場を連想させる空間

色を選ぶ楽しみ

エポイのレザーグッズは色のバリエーションが豊富なのが特徴ですね。
そうなんです。初めは、いっそブランドカラーを一色決めてしまって、それを空間として強く打ち出していくという方向性も出たのですが、やはり商品を見ていると、豊富に色があるというのが綺麗で、そしてお客様も色を選ぶという行為自体を楽しまれているということだったので、空間の中に様々な色が点在している、そんな風景を作りたいと思いました。なので、商品の色と、空間の色のバランスには気を使いました。
運命の物件との出会い

運命の物件との出会い

過去の作品では、例えば木を使うにしても、化粧板ではなく無垢の木を選ばれていますし、「エポイ・ブロック」の什器にも合皮や素材感の似たもっと安価な素材を使わずに、本物の革を使っている。こうした素材の選び方にはどのような理由があるのでしょうか?
今回のプロジェクトでは、物件探しの段階から関わっていました。あの場所に行き着くまでに何件も物件を見たのですが、あまりピンとこなくて……。商用物件だと、一つのビルを他テナントと共有しなければいけないことが多いので、空間のアイデンティティが互いに戦ったり、消し合ってしまうことが多い。けれども、今回の物件は一棟の建築として完結していて、エポイだけの世界観を作り込むことが出来たので、それが魅力でした。元々の空間も白を基調にまとまりがあり、空間はコンパクトでも、天井が高くて天窓から自然光が沢山入ったので、そうした空間の気持ち良さも活かそうと考えました。
“見せる”店づくり

“見せる”店づくり

1階と2階との空間の分け方は大胆ですよね。
もちろん、ビジネス面から見れば、なるべく多く商品を置ける店の方が良いに決まっているけれど、今回の店は「フラッグシップ」という位置付けだったので、“売ること”以上に、”見せること”を重視して空間構成を考えました。地下一層、地上二層の建物なのですが、各階は30平米程度とそれぞれコンパクトな空間だったので、機能を建物全体に分散させることで、店舗に必要とされる機能を満たしながらも、余白を十分に保った空間作りを心掛けました。B1階はストックとスタッフルーム、1階はディスプレイスペース、2階はショップスペースとしました。予算の関係で実現出来ませんでしたが、元々、1階を庭園にするという案があって、その案の延長で、1階全体を大きなウィンドウスペース、もしくはエントランススペースと捉えて、ガラスでは区切られているけれど、外と中がゆるやかに繋がっていく、そんな開放的な空間を目指しました。1階では、シーズンごとのテーマに合わせて、随時インスタレーションが設置される予定です。
ダイケイ・ミルズの作品は素材使いが印象的ですが、今回のプロジェクトではどんな素材を使っていますか?
エポイの製品に使われている色は、日本の伝統色を基調にしており、また、日本の伝統色の多くは自然植物に由来することから、今回のプロジェクトでは自然由来の色を空間に取り入れようと考えました。以前、エポイの展示会のために作った木製トレイに、塗りではなく染めの手法で色を付けたのですが、すると、色が木目に重なって浮かび上がってとても綺麗だったんです。この時の経験がヒントになって、色という要素と木という自然素材を合わせることで、エポイ独特の色使いを空間に表現出来ると思いました。そこで、今回のプロジェクトでは、染料も使わずに、木材そのものの色を活かそうと思いました。木材とは一口に言っても、馴染み深いホワイト・ベージュ系のスギ、ナラ、ヒノキ、マツから、ブラウン系のマホガニー、ウォールナットまで様々で、更に同色系でも、赤がかっていたり黄がかっていたり、一つ一つの木ごとに全く発色が異なるのです。そこで今回は、色を特に強く意識させるような木材を探しました。100種類以上の木材を見た後で、ようやく美しい紫色のパープルハートという木材に出会いました。鮮やかな発色がありながら、落ち着いた印象の、エポイにぴったりの素材だと思いました。Epoi本店ではメインの素材として、フロアリングに主に使用しています。
空間を大きく捉える

空間を大きく捉える

デザインのユニークさと、空間の心地良さの均整が取れた素晴らしい空間ですね。
本当のところは、自分のデザインをもっと打ち出したい思いもありましたが、元々の空間が特徴的なだけに、あまり尖ったデザインを入れ込み過ぎてしまうと、かえってトレンディになり過ぎたり、主張が強過ぎて居心地が悪くなってしまうので、空間にもブランドにも寄り添ったデザインのあり方を意識しました。そこで、細々とデザインするというよりは、空間全体としての体感の仕方をデザインすることにしました。そのインスピレーションとなったのが、マーク・ロスコの「シーグラム壁画」というアート作品でした。とある美術館でその作品を見る機会があったのですが、作品が飾られた部屋に入ると不思議と、壁、床、絵画、照明……などの個別の要素が意識されるのではなく、素材、色、光……が空間として一体となって意識されました。Epoi本店でも、同じ感覚を表現したいと思い、一つ一つの空間の要素を大きく捉えて、それらが心地よいバランスで存在することだけを意識して空間をデザインしていきました。
自由な空間デザインの発想

自由な空間デザインの発想

おっしゃる通り、空間を構成する要素の内、Epoi本店では光が重要な役割を果たしていますね。
初めて内見に行ったのは昼間だったのですが、2階の天窓から入る自然光の光がとても心地よかったんです。電気をつけなくても十分に明るくて。その光の感覚を、昼夜関わらず再現出来るような照明環境を考えました。空間を明るくするのに、例えば、スポット照明では灯体のモノ感も出てくるし、光源も見えてしまう。間接照明では作為的すぎて、光が人工のものとして意識されてしまう。そこで、考えたのが、光源を半透過フィルムで覆い、フィルム面全体を発光させるライトボックスでした。また、錐形の天井に合わせた造形のライトボックスを、天窓と並べて設置することで、あたかも天窓から光が入ってきているかのように見せました。スポット照明や間接照明だと、空間の部分部分を明るくするけれど、ライトボックスは、空間全体を均一に明るくすることが出来る。こうして、日中の野外のような、空間全体に柔らかな光が充満しているような照明環境が生まれたのです。
ダイケイ・ミルズの作品は、デザインやコンセプトがとても先鋭的ですが、一方で空間としての居心地の良さも達成されていますよね。デザインをする上で心掛けているのは何ですか?
先鋭性というのは、万人に受け入れられるものではないかもしれないけど、空間への落とし込み方次第では、それが広く受け入れられるものにもなり得ると思います。岐阜に「養老天命反転地」という荒川修作が作ったアート作品があるのですが、その場所を訪れた時に、コンセプトや造形はとても先鋭的だけれども、同時に、うねるような大地の起伏によって作り出されるダイナミックな景色や、身体を動かすことの高揚など、単純に空間として楽しい・心地よいという感覚があったんです。その感覚の源泉を考えてみると、きっと、目の前にコンセプチャルな彫刻作品があっても、太陽があって、青空があって、風が吹いているから、脳が、高尚なアートを見ているというよりも、公園に遊びにきているという認識の仕方をすることに気付きました。なので、ショップデザインにおいても、機能としてはショップであるべきですが、空間としては公園のようであっても成立すると思うのです。外や中、商業空間や自然空間、そうした概念をとっぱらって純粋に空間の質だけに目を向ければ、ますます豊かな空間デザインの発想が生まれてくると思うのです。

バイオグラフィー

中村圭佑

中村圭佑

1983年静岡県浜松市生まれ。2011年に東京を拠点とするデザイン・設計事務所ダイケイ・ミルズを設立。レストランやブティック、オフィス、ギャラリーなど様々な空間のデザインを手掛ける。主な作品に「タクラム ヘッドオフィス」(2018年/ 東京)、 「ロク ビューティアンドユース ユナイテッドアローズ 大阪」(2018年/大阪)、「エイベックス」(2017 年/東京)、「玉川堂」 (2017 年/東京)。現在、国内外で多数のプロジェクトを進行中。
daikeimills.com

過去の作品

タクラム ヘッドオフィス
タクラム ヘッドオフィス
ロク ビューティアンドユース ユナイテッドアローズ 大阪
ロク ビューティアンドユース ユナイテッドアローズ 大阪
エイベックス
エイベックス
玉川堂
玉川堂

ストア情報

Epoi Honten
エポイ本店

東京都渋谷区神宮前4-13-8
営業時間:11:00 a.m. – 8:00 p.m.
TEL:03-5843-1621

エポイは表参道に新しいフラッグシップショップ「Epoi本店」をオープンしました。1階は、シーズンごとのインスピレーションとリンクする空間で、オープン時には、ドライ草花をオーガニック樹脂で固めた100%オーガニックかつグリーンな素材ORGANOID©を使ったインスタレーションを展開。天井の高い開放的な空間に自然光のトップライトが心地良い2階には、色彩豊かなエポイのバッグとレザーグッズが並びます。光で満たされた白の空間は、自然をインスピレーションとするエポイのカラーパレットを引き立てます。エポイの提案するコンテンポラリーな新空間に、是非足をお運び下さい。